カリスマ入門

http://docs.google.com/present/view?id=dchb3tb2_137ddk9gfhb

ただ立っているだけでも感じられるその大物感。不合理なことを言おうと理不尽なことをしようと、勝手に周囲が深読みをしてカリスマは高まる一方。もはやチートとしか言いようのないポジティブスパイラル。それが「カリスマ」。日本Ruby界だけを考えても、そういう存在が何人も思いつくでしょう。


自分もそういう存在になりたい!そう思ったことが、誰しも一度はあるはずです。より具体的に言えば、弾言したい!ガツンしたい!そう思い眠れぬ夜を過ごしたことが、きっと幾夜もあるでしょう。
でも・・・。多くの人は考えます。でも、カリスマって生まれつきのものでしょう?努力して身につくようなものじゃないよね?
いいえ、安心してください。カリスマは習得可能な技術なのです。


ということで、もうひとつの「カリスマ入門」はじまり。TokyuRuby会議のLTと大筋同じだけど、もともとはブログでやろうと思ってたネタなんす。


ここに一つのDVDがあります。この中で東京東海大学の乃木坂喜平教授は膨大なカリスマの発言・言動から導き出した16のテクニックを惜しげもなく公開してくださいました。今回のプレゼンではこの16のテクニックからいくつかを選び、実例とともに説明したいと思います。


Ruby界でカリスマと言えば当然、まずはこの人でしょう。Rubyの開発者「まつもとゆきひろ」さんです。早速そのカリスマ発言を見てみましょう。

「『Ruby』の開発で世界に知られて、なんて言われますが、ここ数年のことですからね。別に有名になろうと思ったわけでもないし、ずっと好きでやってきただけ。言ってみれば、趣味みたいなものです。

流石という他ないこのカリスマ臭。そう、Rubyを開発したのはなにかあざとい意図があったわけではないのです。ただ、それがぼくには楽しかったから。
シビれます。カリスマは生まれ出でたその瞬間からカリスマ。尊いものを前にした恍惚とともに感じる、やはり自分は永遠にそうはなれないんだという絶望。そのようなアンビバレントな感情をみなさんは抱いたのではないでしょうか?
実はこれはテクニックです。

テクニック13. 狙ってやっているわけではなく、好きなようにやっていたら結果的にそうなっちゃっただけです、という感じで行く

頼まれてもいない自己アピールを虎視眈々狙い続けているカリスマにとって「Rubyの開発で世界に知られるまつもとさんすごいですね」などと手放しにホメられてしまうことは、実は非常に困ったシチュエーションなのです。それは本来自分がいうべきことなのですから。
そういう場合に非常に有効なのが、今回まつもとさんが使用しているこのテクニック。一見質問を躱しているように見えてその実、強烈な「お前らとはもともとの出来が違う感」を漂わせるこの高等技術、みなさんももしもの時のために覚えておくべきでしょう。


先程の例はカリスマ入門以前のみなさんには正直なところ少し高度すぎました。そこで今度は日本Rubyの会の会長、高橋征義さんにご登場いただきましょう。

Rails以前はそこまで注目されていませんでしたから、あんまり重く考えずに、いい出しさえすれば軽く団体を作れたんです。ラッキーでした。」

カリスマとは民衆をリードするものです。当然我々凡人の二歩も三歩も先が見えています。高橋さんのカリスマ発言をみた人は「Rails以前はそこまで注目されていなかったRubyにいち早く目をつけるって、なんて慧眼!」そう思ったはずです。
が、もちろんこれはテクニックです。

テクニック1. 先取りをアピールする

先取りアピールの優れた点、それはその圧倒的なまでの利便性と汎用性の高さです。先取りアピールがなされるのはいつか?それは何かが流行った後です。何かが流行った後に、俺は以前からこれを知っていた、とアピールするのが先取りアピールであって、ジャンケンで言えば後出し、負けるはずのない勝負なのです。テクニックナンバー1が与えられるのも納得の強力さでしょう。
その基本であり奥義でもある先取りアピールをなんの嫌いもなく繰り出せる高橋さんのカリスマテクニシャンぶりに我々は驚愕する他ありません。


日本Ruby界でカリスマといえば、もしかすると先の二人を差し置いてこの方を上げる人も多いかもしれません。日本が誇るRubyKaigiを支える角谷さんです。早速その角谷さんのカリスマ発言を見てみましょう。

躊躇なく赤いピルを飲めばよい。我々に はたのしいRubyとナイスな人びととのつながりがある。」

無名の質

調査の過程で明らかになったのですが、角谷さんのカリスマ発言は質・量ともに群を抜いています。今回はその膨大なカリスマ発言の中から二つを選びました。Take the Red Pill。プレゼンタイトルだけですでにカリスマ臭ムンムンです。おそらくこのプレゼンを実際に目にしたみなさんは全員ピンクでゆるふわ〜な世界に誘われていたことでしょう。しかし・・・。
え、いくらなんでも角谷さんだけはホンモノだろう。あのカリスマが小手先のテクニックだなんて!まさか!!
・・・そんな悲鳴が聞こえてくるようですが、残念ながらこれもテクニックなのです。

テクニック4. スピリチュアルなものに傾倒する

すべてのカリスマに共通する問題、それが「薄っぺら問題」です。カリスマは常に凡人とはひと味違う発言、深読み可能な発言を求められていますが、そういった発言は一歩間違えると「あいつカリスマぶってるけど口だけの薄っぺらい奴じゃないのか」などと言われる危険を伴います。
これは様々なカリスマテクニックを駆使する角谷さんでも例外ではありません。いやテクニックを駆使するからこそこの問題に陥るのだと言ってもいいでしょう。
こんな時に有効なのが「スピリチュアル」です。世界、宇宙、オーラ、これらは特に年頃の女性に対しては口にするだけで発言に重みを加える魔法の言葉です。ただここにひとつ落とし穴があります。私たちはプログラマです。血液型占いさえ否定する我々を前に迂闊なスピリチュアルアピールなどしてしまうと、逆に薄っぺらさを補強してしまう恐れがあるのです。
そこで角谷さんが選んだのがマトリックスでした。確かにマトリックスこそ我々プログラマにとってのスピリチュアル。この選択こそカリスマエリートの証、角谷さんの非凡さの現れと言えるでしょう。

・・・

さて、本来ここではRubyの次世代VM開発者、笹田さんのカリスマ発言を紹介する予定でした。が、私の調査力不足もあり残念ながら見つけることができませんでした*1
とはいえ真のカリスマであれば、そのカリスマ発言を見つけるのに「探す」という行為すら不要なはず。笹田さんはもう少しカリスマの自覚を持ち発言に気をくばるべきだと老婆心ながら忠告させていただきます。

・・・


その代わり、と言っては失礼ですが笹田さんのカリスマ発言探索中に、かずひこさんによるすばらしいカリスマ発言に出会いました。

恋とハックはアジャイルが命!

「恋」と「ハック」あまり似つかわしくない二つの単語を併記することによるなんとも言えない甘い読後感。このコピーを考えた人は只者ではない、ましてや折りに触れこのコピーを繰り返し口に出しているとすると、どれほどそのカリスマ度は上がっていくことだろう・・・。ここまで読んできた皆さんならそういう途方もないポテンシャルをこの短い文章から感じるはずです。
これについては言うまでもないでしょう。見事なテクニックです。

テクニック7. エロスを意識する

一般に「エロス」は日常生活ではタブーとされています。だからこそそれは敢えて口にすればそれだけでカリスマがアップする魔法の言葉なのです。相手が予想もしていないタイミングで、できるかぎり真面目な表情で、エロスを感じさせる発言をしてみてください。
初心者は「エロス」という単語をそのまま使うことをオススメしますが、慣れてくればセクシー・愛撫・色気など利用できる単語が沢山あることに気づくでしょう。多用は厳禁ですが、要処を押さえて利用すればそれだけであなたのカリスマがアップすること間違いありません。


それでは最後にRuby以外のカリスマによるカリスマ的発言を見てみましょう。

「ぼくは、そこで一言申し上げた。あるいはそれは、『申し上げた』というような生やさしいものではないかも知れない。端的な言い方をすれば、ガツンと言ってやった。

これを実際に言われた人は非常にびっくりしてしまったそうです。ひがさんと言えばSeasarの作者、日本Java界のカリスマと言って間違いない人なのに、単なる事実の指摘でいきなりマジギレか!こんな<censored>んて・・・!
しかし安心して下さい。実はこれはテクニックだったのです。

テクニック3. 昂ぶる

存在するだけでスペシャルであるカリスマは、世間に対して常に違和感を感じています。そう思わせなければいけません。「昂ぶる」というテクニックは、この常に違和感を感じているということを強烈に周囲にアピールする手段なのです。
俺は今まで違和感を我慢してきた。それが今、溢れた。カリスマ故に感じ続けていたこの俺の違和感、その長い恥辱の日々を想像しろおまえら。伝えるべきはそういう思いです。昂ぶる対象はほんの些細なことで構いません。むしろ些細であればあるほど、蓄えてきた違和感の総量をうかがい知れるというものです。
つまり何が言いたいかというと、あのときひがさんは怒ってなんかいなかった!いなかったんだよホントは!!

「偶然じゃないっ・・・! 勝つことは偶然じゃないっ・・・! 勝つものは勝つべくして勝っているのだっ・・・!」
「勝つ人間はこれほど・・・ 用意周到に 考え尽くしているのか・・・・・・!」
カリスマになった人たちはたまたまタイミングがよかっただけだ。俺もなにか運良くきっかけがあればカリスマになれる、そのように考え漫然と過ごしている人はカリスマにはなれません。
私も先日のTokyuRuby会議01をもってカリスマになりましたが、これも運やタイミングではありません。こちらをご覧ください。勘の良い人であればこれが「テクニック7. エロスを意識する」であることがすぐわかるでしょう。そうです、私は2年近く前からカリスマへの努力を続けていたのです。
何度でもいいましょう。カリスマは技術です。
みなさんが今後これらのテクニックを活用し、有意義なカリスマライフを送られることを願ってやみません。

カリスマ入門

カリスマ入門

*1:ただし、あとで松田さんにこのような素晴らしいカリスマ発言を教えていただきました: http://twitter.com/ko1s/status/2218082234