フェイスブック 若き天才の野望
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
- 作者: デビッド・カークパトリック,小林弘人解説,滑川海彦,高橋信夫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/01/13
- メディア: 単行本
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フェイスブックの歴史や取り巻く環境からサッカーバーグの理想まで、内容は広範なのに構成がよくて読みやすい。しかも面白い。実話のはずなのに適度なタイミングでイベントが起きて飽きないし、これは映画化(正確には違うけど)するわ。
特にスタンフォード大学から出て拠点をサンフランシスコに移してからは聞いたことのあるサービスの名前やら創始者やらがバンバン出てきてそれだけでワクワクする。あの地の利と人的ネットワークに東京にいて立ち向かえる気が全くしない。もちろん周囲の人やできごとだけではなくザッカーバーグの人となりも面白い。フェイスブックの収益化のためにグーグルからサンドバーグを招いた直後に、サンドバーグに全てを託して一ヶ月の世界一周旅行に行く下りとか、「自分は収益化には関わりたくありません」みたいな意思が一貫しすぎててシビれる。
フェイスブックはなんでそこまで頑なに実名にこだわるんだろうかと疑問だったけど、本書に載っていたザッカーバーグの「我々はフェイスブックをユーティリティだと考えている」という言葉でなんとなく分かった気がする。たしかに身元を明かさずに匿名で契約できる電力会社なんてない。いままでウェブ上の世界は現実?とはある程度切り離されていて当然と考えていたし今もそれでいいと思っているけど、それでも、そうではない未来もそんなに悪くはないのかもなと思わせる説得力とエネルギーが本書に何度も出てくるザッカーバーグの言葉にはあるように思えた。
積極的にネットを活用しない人たちの多くは「どこの誰ともわからない人と言葉を交わしたり、一方的に観察されたりするのは耐えられない・怖い」という感覚でいるように思う。実名が当然になればそういった人たちも今よりはネットに懐疑的ではなくなるだろう。今のネットにはいないそう言った人たちが存在するウェブが、今の匿名ベースのウェブよりも貧相なものになると誰が言えるだろう。
そういう意味でザッカーバーグのポトラッチと贈与経済への言及が特に面白い。情報を他の人に伝えることでその情報の稀少性は目減りするけど、代わりに名誉が手に入り世界は少しだけ豊かになる。参加者の多くがそのように行動できるなら、たしかに匿名のウェブよりも、実名のウェブの方が豊かに成り得るのかもしれない。
フェイスブックはアカウントだけ作って放置だったけど真面目に使ってみようかな、と思えるいい本でした。オススメ。